【野田市】こんなところにジン蒸溜所が!? 日本で生まれた世界基準のクラフトジン「TL Pearce」の魅力とは?
ここ数年、クラフトジンが静かなブームになっています。バーや酒屋でもジンの取り扱いが増え、個性的なボトルがずらりと並ぶ光景を目にする機会も多くなりました。しかし、千葉県野田市にこだわりのクラフトジンを生み出している蒸溜所があることを知っている人は、少ないのではないでしょうか?
その名も「TL Pearce(ティーエル・ピアス)」。伝統と革新が融合したジンを手がける、まさに知る人ぞ知る蒸溜所です。今回はそんな「TL Pearce」の魅力とこだわりと実際に訪問させていただいた様子とともにご紹介します!
こだわり抜かれたクラフトジンの誕生
「TL Pearce」の蒸溜所は、アメリカ出身のボブさんとマイケルさんによって2022年7月に設立されました。

ボブさん(左)とマイケルさん(右)
ボブさんは、剣道留学をきっかけに日本に住むようになり、滞在中にウイスキーの魅力に目覚め、お酒の道へ。ウイスキーを手掛ける大手飲料メーカーに就職し、スコットランドの名門「マッカラン蒸留所」での修行も経験しました。
その後も数々の有名なスコッチ蒸溜所で経験を積み、現在では世界的に知られる存在となったボブさん。現在は、MHDモエヘネシーディアジオのアンバサダーをつとめていたり、著名な方の蒸留所立ち上げサポートなども行っています。
一方、マイケルさんは野田市にある武神館で忍者修行に訪れたことがきっかけで日本へ。日本での生活を続ける傍ら、ベルギーへ渡り、1600年代の伝統レシピを受け継ぐ「サース蒸溜所」で蒸溜技術を学びました。
彼がベルギーで試作したジンの美味しさが評判を呼び、ボブさんと一緒にジン造りへの道を歩むことに。そして、奥様の出身地であり、彼自身も修行をしていた野田市に蒸溜所を構えることを決めました。
伝統と革新を尊重するものづくり
さっそく蒸留所の中へと足を運んでいきます。流暢な日本語お二人が直接案内してくださいました。
「TL Pearceにあるジン蒸留釜はおそらく日本最大級です。我々が作っているのはジャパニーズジンなのですが、世界クラスのジンを日本育ちのボタニカルで仕上げるのが特徴です。クラシックスタイルを大切にしつつ、伝統と飲みやすさのバランスを追求しています。」(ボブさん)
代表作は「トーキョー・ドライ・ジン」。これはロンドン・ドライ・ジンの日本版ともいえるもので、日本産のスピリッツとニュートラルスピリッツを使用。野田の水とともに、9種類のボタニカルを2000Lの蒸溜釜に漬け込み、一晩寝かせます。
「主なボタニカルは、北海道産・広島県産のジュニパーベリー、愛媛県産のみかん、瀬戸内レモン、千葉県産ローズマリーです。あ、あと愛情という名のボタニカルも入っているので正確には10種類ですかね(笑)」(マイケルさん)
「翌朝6時頃から蒸溜を開始し、加熱によってボタニカルの風味や香りを引き出します。蒸気が冷却されることで生まれるハート(中心部分)は約1000L、アルコール度数は75%です。これを加水して度数を調整し、フィルターを通して手作業でボトリングしています。」(マイケルさん)
TL Pearceでは、海外向けや能登向けのOEM製造も行っており、年間の生産量は約10万リットルに及びます。これらすべてを3名で担っているという事実にも驚きです。
「私たちは、日本のローカルボタニカルを強調するジャパニーズジンとは異なるアプローチを取っています。海外の伝統や技術を尊重しながら、新しいものづくりに挑戦したいと考えています。」(ボブさん)
豊富な経験から生まれる蒸溜技術を駆使し、世界基準の品質を追求しながらも、日本らしい繊細な味わいを表現している「TL Pearce」。世界にも通用するクラフトジンが野田から誕生しているということに驚くとともに誇りにも思いますね!
合言葉は「Be Classic!」
蒸溜所見学の後は、2階のテイスティングルームへ案内していただきました。これはアメリカやヨーロッパの蒸溜所では一般的なスタイルとのこと。
禁酒法時代のスピークイージーをイメージした本格的な内装がとても素敵な雰囲気を醸し出しています。
筆者もここで「トーキョー・ドライ・ジン」のジントニックをテイスティングさせていただきました。「Be Classic!」の掛け声とともに乾杯!
洗練された品のある香りが広がり、柑橘の柔らかな風味と味わいが楽しめます。飲みやすく、すっきりとした後味でジン初心者にもおすすめのおいしさです。
「和食にも合うようにと意識しました。例えば、お寿司と一緒でもネタの旨味やシャリの甘み、ワサビの香りを邪魔しないハーモニーを生み出せる自信があります。」(マイケルさん)
他にも合計4種類のジンを展開しており、それぞれに特徴と魅力があります。使用しているボタニカルや開発エピソードを聞きながらのテイスティングは、とても興味深い特別な体験でした。
さらにバーの奥には開発用のプロトタイプがずらりと並び、今後の新作にも期待が高まります。
「レシピを考えるのは大変ですが、好きな作業でもあります。一度に仕込む量が多いため失敗できない緊張感もありますが、イメージ通りのものができたときはとても嬉しいですね。」(マイケルさん)
「TL Pearce」のジンは、周辺では「BAR CABIN」(野田市)や「hakken」(流山市)などで飲むことができるほか、「日野屋」(野田市)で4種類すべて販売されています。また、蒸溜所でも購入が可能です。※要訪問予約
現在、オフィシャルで案内はされていませんが、ご希望の方には蒸溜所見学に対応しているそうです。興味がある方は、公式HPやお電話にて事前連絡が必要ですのでご注意ください。
「今年の夏頃から本格的な蒸溜所ツアーも企画し、HPで案内したいと思っています。ぜひみなさんにTL Pearceに興味を持ってもらえたら嬉しいです。」(マイケルさん)
まとめ
クラシックスタイルを大切にしながら、日本ならではの要素を取り入れたジン製造を行うTL Pearce。ジン愛好家はもちろん、これからジンを楽しみたい人にもぴったりな場所です。実際に足を運び、その魅力をぜひ体感してみてはいかがでしょうか?
最新情報は公式HPまたは公式インスタグラムほかでご確認いただけます。
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